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トップページ > 臨床現場で働く歯科技工士の声 > 歯科技工士の『イマ』を訊く2
臨床で働く歯科技工士の声

歯科技工士のイマを訊く-vol.2- 【桝本 洋平さんの場合】


※今回はインタビュー形式で配信いたします


 歯科技工士 ― 歯科技工士という職業はネット上では『歯科技工士になんてならない方が良い』とまで書かれていたりとネガティブな情報が飛び交っていますが、これについて桝本さんはどうお考えですか?


情報を発信するということに責任を感じることができていれば、どのような意見にも価値はあるのではないかと思っています。

歯科技工業界は職場環境や社会的な面でも、広く改善しなければならない部分も残っていますので、ネガティブな意見が全て嘘だとは言えません。
仕事に何を求めて、どのような自分でいたいかによっても情報の捉え方は変わってくるのではないでしょうか。
ただし、現実の世界では悪い面を発言する機会はあまり多くないので、ネット上でマイナスの意見が多く目立つということは、歯科技工業界全般が抱える問題の根はやはり深いのかもしれません。


 歯科技工士 ― マイナスな意見が多く目立つのはネットの特性もあるかもしれません。大切なのは、その情報を鵜呑みにするのではなく情報を自分にどう活かすかですね。
桝本さんは『改善しなくてはいけない部分がある技工業界』に入るあたって『学生の時にこうしておけば良かったな』又は『こんな事して良かった』と感じられた出来事はありますか?


どのような業界に飛び込むにしても、社会人になる前の準備や覚悟に大きな違いはないと思います。 歯科技工士は免許を取得して臨床の現場に入ってからが本番なので、学校で習得する技術や知識がいつまでも通用するわけではありません。
短い学生の期間に技術や知識を確立させることは非常に難しいですし、ましてや歯科技工業界の底を推し量ることなど出来ないはずです。 それよりも人としての魅力を磨くことや、社会のルールを学ぶことのほうが大事だと思います。

どんなことでもいいので、自分がとことん興味を持って取り組めることに挑戦してみるのもいいですね。 自分の目標よりも少しだけ高いレベルで挑戦し続け、その経験を積むことができれば、必ず将来の自分に繋がるはずです。

私の場合は音楽が好きだったので、高校時代の友人と一緒に専門学校の校歌を作詞作曲し、それが母校の校歌として採用されました。 現在では校名が変更されてしまった為に、残念ながら”幻の校歌”となってしまいましたが、当時の校長から「理事会を通して正式に校歌として採用された」と伝えられたときは驚きました。
もう一度学生時代をやり直せるなら、夏休みを利用してバックパッカーでもやりたいですね。


 歯科技工士 ― 校歌に採用されるなんて音楽も相当な実力の持ち主なんですねですね。なんでも『興味を持って取り組む』そういった姿勢は歯科技工の仕事にも通じる事ですよね。
桝本さんの話を聞いて、私も学生時代に色々と挑戦すれば良かったと後悔してきました(笑)

学生時代に習った知識は通用しない事多いですよね、桝本さんと私が歯科技工士になって10年ほど経ちますが『CAD/CAM』においての技術の進歩も著しいと思います。一部では『歯科技工士が必要なくなる』と考える人も多いです。
私は設計や最終調整は歯科技工士でなければ難しいと思いますし、個人的な意見としては需要においては影響は無いと思いますが、それについてはどうお考えですか?


私たちはお互いにデジタル世代ですからね。 私が歯科技工士になった年に日本でもジルコニアの許認可がおりてセルコンが登場したのですが、その時の業界の空気感をよく覚えています。
今後の歯科技工士のあり方に不安を訴える方もいましたし、デジタル化の普及が進むのはずっと先だと考える方もいましたが、これまで扱えなかった材料が登場して、新しい仕事の形が生まれたということに、私自身はとてもワクワクしていました。

それから10年程経ちましたが、制限はあるものの保険診療にCAD/CAM冠が新設され、オープンシステムの普及も進んだことで、デジタル化の流れはこれからさらに勢いを増していくはずです。 『CAD/CAM』『3Dプリンター』『光学印象スキャナー』の登場は、未来の歯科技工士のカタチを大きく変える可能性を持っています。
今後の歯科技工業界を見通すという意味では、今が最も難しい時期にあるのかもしれません。 なぜならデジタルの世界では、”昨日まで出来なかったことが今日出来るようになる”という事も起こりえるためです。

しかし、これらのデジタル機器の登場は、歯科技工士の仕事を奪う敵であるという考えだけではなく、もっと前向きな捉え方も出来るはずです。
歯科技工士であれば手作業による仕事を好む人も多いと思いますが、機械でも同じように出来てしまう仕事をわざわざ自分の手でやりたいとは私は思いません。
人の手だからこそ達成できる仕事に集中し、その技術を磨く環境が整うのであれば、それは歯科技工士にとって幸福なことではないかと考えています。


歯科技工士  ― 私もデジタル機器は敵では無く効率良く仕事が出来るようになる、あくまでもツールの一つだと思います。時間が短縮される事によってプラスアルファの手間が加えられたとしたら患者さんにとっても幸福ですよね。
では最後の質問とさせていただきますが、桝本さんはこれからどんな歯科技工士になりたいという目標をお聞かせ下さい。

”自分にしか出来ないことをやりたい”というテーマを持っています。
歯科技工士だからこそ取り組める必要な仕事は、少し視野を広げるだけで意外と多く見つかるのではないでしょうか。
今まで経験してきた多くの物事は、一見すると仕事とは何の関係も無いように思えますが、その中で発見した自分の資質と言えるものを、歯科技工士の仕事の一部として機能させていくことが、私の大きな目標でもあります。

その上で患者の生活を想像できる歯科技工士になりたいですね。
ラボで仕事をする歯科技工士にとって、そのほとんどの時間は石膏模型と向き合っていますし、どうしても”納品する相手は歯科医師”という感覚に陥りがちです。
私たちが扱う石膏模型の先には、様々な生活を営んでいる患者の存在があるということを忘れずに、歯科医療従事者として責任ある姿勢を示すことができれば、歯科医師との信頼関係をより強いものにすることができ、業界全体にとってもプラスになるのではないかと思っています。


歯科技工士  ― 確かにそうですよね、私もそんな歯科技工士を目指して研鑽していきたいと思います。
今回はインタビューさせていただいた私にとっても大変良い刺激になりました。
お忙しい中ありがとうございました。



桝本 洋平
(Mセラミック工房)
2005年
福岡医科歯科技術専門学校
(現 博多メディカル専門学校)卒業
2005年
Mセラミック工房勤務

 歯科技工士として働く傍らWebデザインや写真などの異なる分野にも興味を持ち、その知識と経験を生かして福岡県歯科技工士会の広報を務める。
写真教室で出会った仲間らとともに、異業種写真集団”七つの知恵の実”を結成する。同グループで制作した共同作品が、まちなかアートギャラリー福岡において、福岡市文化振興財団賞を受賞する。


web site ⇒ 福岡県の歯科技工所 Mセラミック工房


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(2014.8.16)