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トップページ > 臨床現場で働く歯科技工士の声 > 歯科技工士の『イマ』を訊く4
臨床で働く歯科技工士の声

歯科技工士のイマを訊く-vol.4- 【石原 広規さんの場合】


アメリカという選択

私は現在、北米はUltimate Styles Dental Laboratory にて、歯科技工士を行っている石原広規と申します。この度は「僕らの歯科技工士様」のご依頼により、僭越ながら筆を取らせていただく運びとなりました。私は日本の岐阜県立衛生専門学校歯科技工士科を2003年に卒業後、すぐアメリカにあるI.D.T.Cというセラミックの研修学校に入学しました。岐阜県立衛生専門学校時代、私の2期先輩に当たる方がその研修学校の一期生であり、彼が日本に帰国した際にたまたまお会いできる機会に恵まれ、そのお話に大変興味を持った事が渡米のきっかけとなります。それまでは、卒後すぐ就職して良いものなのかどうか、ふつふつと悩んでいました。ところが先輩のお話を聞いた際にその悩みが一気に払拭され、私の頭の中に“アメリカだ!”という強い想いが膨れ始めました。その当時、日本に同じような卒後研修の学校の存在があるのを知らなかった事もあり、ここで知ったアメリカの研修学校への入学を想いのままの勢いで決め、渡米を決意しました。

渡米してから

異国の地ですから、言葉も違えば習慣も違う。そんな当然の事は知ってはいながらも、実際に渡米しその生活の中に入り込むと、やはりその言葉の壁にぶつかり、コミュニケーションの取り方に最も苦労を感じていました。研修学校のカリキュラムの中にある語学学校に通ってはいましたが、英語の勉強を英語で学という、日本育ちの私にとっては何とも奇妙に感じる授業であり、元々英語が得意でなかった私にはさっぱり理解ができませんでした。渡米前にもっと勉強しておけば良かった・・と大きな後悔をしたものです。しかし、現地スタッフ、先輩、そして同期に支えられ、少しずつながらも英語に慣れ始め、心情的にも余裕が生まれ、ようやく肝心な歯科技工の方へ集中できるようになってきました。石膏彫刻やセラミックワークを毎日毎日、必死に行っていた事を今でも覚えています。自分で決めて進んだ道なので、もう後戻りはできません。そして他人より上手になるためには、誰よりも多く勉強や仕事をこなさなければならないという一心でやっていました。平日は研修学校と語学学校の両方に通う多忙な日々でした。しかし時には先輩方と一緒に趣味の釣りをしたり、食事を共にしたり、また飲み会などをしてハメを外したりと、リラックスできる時間もいくらか持てる様になっていましいた。そんな中にも、歯科技工の将来や、その知識や技術について熱く語りあう事が常ある、そんな刺激的な毎日でした。

出会い

渡米後一年でセラミックの研修学校を卒業し、研修学校に併設されているラボ(K.E.D.L)に就職させてていただく事とになました。そこでの時間が4年ほど経過した頃、更に自身の技術と知識を向上さたいという想いに駆られていました。日本で開催されている学会や講演に参加してみたいと常々感じていたものの、日本へ一時帰国するための資金も時間もなく、その願いはなかなか叶いませんでした。そんな中、私と同じアメリカで歯科技工をやっていて、多くの雑誌等々で拝見し憧れていた、皆さんご存知の林直樹氏が、ハワイで日本人技工士の方々と講演(Hawaii Mid Pacific Session)をすることを雑誌で知り、これは参加しなければ!と一念発起し、お世話になっていた会社にその資金をお借りしつつも、ハワイに1人で乗り込みました。そこでは素晴らしい講演を拝見する事ができ、多くの感銘と感動を受けまいした。更には講演後に林氏とお話させて頂く事ができ、ちょうどラボの人材を現在探してるというタイミングから、“うちに来る?”というお誘いをありがたくも頂戴しました。そして現在は林直樹氏率いる『Ultimate Styles Dental Laboratory』に在籍しています。

海外を視野に入れている方へ

現状とは異なる環境で仕事、勉強、生活をするというのは、多くの苦労をする反面、それ以上の刺激を受ける事ができます。知識と技術の向上、またそれまでに持っていた価値観の中に、更なる多くの選択肢を持つ事が出来る様になり、新しい自分を発見できるのではないかと思います。しかし残念な例では、苦労の方が希望や夢よりも大きくなってしまい、夢半ばで日本に帰国してしまう人たちが少なくない事もまた事実です。そうなってしまわないためには、日本を出る前に行きたい先の国について下調べを充分にし、その国も言葉や文化をある程度学んで行くことをお薦めします。昨今では海外希望の人たちのための定期的にセミナーもあるので、参加して色々な情報を集める事が良いと思います。

終わりに

渡米をした。この自身の行動を、私ながらで恐縮ですが、良くやったと自身を褒めたいと思っています。そのおかげで様々な素晴らしい人との出会いや、日本にいるだけではきっと感じる事ができないであろう楽しさを味わうことができました。またその反面、外国だから強いられる苦労も多々あり、そんな毎日が私の人生観を少し変えてくれたと思っています。これから歯科技工士になろうと考えている方々、また若手の歯科技工士の方々には、まだまだこれか先、皆さんには多くの選択肢や可能性があると思います。選択が多いだけに悩まされもしますが、私の経験から、日本を飛び出すという事も、その選択枠の中に入れるべきひとつの素晴らしい事柄ではないかと思います。しかしながらその選択をされた際には、夢や希望が叶う反面、多くの苦労が待ち構えているという覚悟も同時に持って目指されてください。

歯科技工というのは大変やりがいのある仕事です。そして他職業では稀である海外就職も充分に可能な業種です。私はこれからも歯科技工という仕事を楽しみ、アメリカ生活と仕事を満喫したいと思っています!

Ultimate Styles Dental Laboratory
石原 広規
23 Mauchly,Suite111
Irvine,CA 92618
http://www.ultimate-dl.com/
(2014.12.31)

【筆者】
石原 広規 (いしはら ひろき)
(Ultimate Styles Dental Laboratory)
第2回エステニアC&B技工コンテスト 芸術作品優秀賞 受賞
【略歴】
2003年 岐阜県立衛生専門学校卒
同年渡米
2004年 I.D.T.C卒
同年 K.E.D.L入社
2007年 Ultimate Styles Dental Laboratory入社


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